米ぬか酵素風呂では酵素を加える必要も、床材を交換する必要もありません。
しかし、微生物を養うために、餌(米ぬか=タンパク質)と水と空気(酸素)を
常に十分与えています。
中でも、私たち人間をはじめあらゆる好気性の生物にとって、もっとも大切な
エネルギー源の酸素です。ご存知のとおり、酸素が少し不足しただけで脳が
働かなくなり、その結果全身が麻痺してすぐに死に至ります。
次に重要なのが水です。水がないとそう長くはいきられません。
そして餌です。私たちは体内に脂肪を蓄えていますので、断食して何日も食べ
なくても生きていられます。いざという時はその脂肪を使うことができます。
この点は私たちのご先祖様である好気性のバクテリアも同様で、餌の米ぬかと水が
十分でも、酸素が少し不足しただけですぐダウンしてしまいますので注意しています。
酸素が欠乏すると、好気性菌は勢力が縮小すると同時に嫌気性菌が勢力範囲を拡大
しますので、発酵の代わりに腐敗が起こるようになり、にがいような酸っぱいような
独特の腐敗臭が発生するようになり、当然発酵熱も発生せず、酵素風呂として使えなく
なります。
酸素が欠乏する原因の中でも重要と言えるのが、水分量です。
水分が多過ぎると、固まりやすく、空気が混ざりにくくなります。また、水分が多いと、体感温度は上昇しますので、床材の温度を上げたい時はどうしても水を多めにする傾向になりがちですが、混入空気は減少しますから、熱の維持は実際には困難になります。
ただし逆に水不足になり、床材が乾燥し過ぎると微生物の活性は下がりますから、熱も
下がります。
このあたりのバランスはかなり微妙ですから、日常的に餌の脱脂ぬかの量、天候、気温、湿度、換気の具合などを考慮しながら加える水の量を微調整しなければなりません。
これらのバランスが適切で、発酵がうまく行っているときは、香ばしいよい香りがし、
ぬかはさらさらでふわっとしており、固まりにくく、粒もできません。
どちらかというと乾いた状態で、体感としては、びりびりとした刺すような熱さは
感じにくく、逆にリラックスしてしっかり温まることができますし、何人入っても
暖かさが持続します。この辺りの匙加減については、関与する変動ファクターが多く、
一律にデータで示すことはできませんが、メンテナンス担当者の経験と、色、匂い、
手ですくった時の感触などの微妙な違いをキャッチできる感性がもっとも重要になり
ます。単細胞である微生物自体は肉眼では観察できませんが、犬や猫などと同様、
生き物ですから、何よりも愛情をもって接しています。